Dropbox との別れが Papers との別れ
これまで論文管理は Papers 3 というアプリを使っていた. Papers はバージョン 1 から使い続けていたアプリである. Papers のライブラリを Dropbox に置くことで,macOS と iPad での論文共有が簡単に行えていた. 特に,PDF を串刺しにしたキーワード検索はかなり強力で,物覚えの悪い私にはちょうどいいアプリだった. また,Apple Pencil を使った iPad による PDF のアノテーションもかなり便利だった.
しかし,Papers 3 は Readcube に買収されてしまった. Readcube は新たに Readcube Papers という新しいアプリを立ち上げたため,もう Papers 3 の方はメンテナンスをしないとのこと. このまま使い続けることも可能ではあるが,もう一つの大きな障害がやってきた. それが,Dropbox のデバイス制限だった.
Papers 3 の macOS 版はどこにライブラリフォルダを置いてもよかったが,iOS 版は Dropbox に置くことしかできなかった. WiFi Sync を選択すれば,Dropbox 依存はしないが,これはこれでやはり面倒だ. Dropbox については,現在無料版を利用しているが,先日のライセンス変更により,無料版の場合同期できるデバイスは 3 台までとなった. 現在は,macOS と iOS の間は iCloud 同期を活用している. このため,Dropbox への課金までは行なっていなかった(現在,ほぼ Dropbox への依存はしていない). すでに現在 3 台以上のデバイスを同期しているため,新規に購入する MacBook Pro では Dropbox が利用できない. したがって,Papers 3 がインストールできても,論文自体は同期できないこととなる. このため,過去にテスト運用していた Mendeley の本格運用をすることにした.
Mendeley のセッティング
本学(というより本法人の図書館)では,昨年度から Mendeley の期間版 が利用可能になった. 2021年3月末までの期間限定ではあるが,2年ほどは100GB の容量まで利用可能である. 4月から契約継続するかは今後検討とのことだが,その後はまたその時に検討することにする. ここでは,覚書として設定したものを記録しておく.
-
アカウントの設定
- 最初に Mendeley のアカウントを作成する必要がある.学内から Mendeley にサインインすれば,機関版になるとのこと.
- サインインしたら,「Setting & privacy」を開き,左のリストから「Subscription」を選択する.Mendeley Institutional Edition と出ていれば機関版になっている.
-
アプリケーションのインストール
- macOS 版の Mendeley Desktop アプリは homebrew cask からインストールする.
- iOS 版は App Store からインストールする. 残念ながら iOS 版の Mendeley は Papers 3 と異なり Apple Pencel での書き込みには対応していない. このため,iOS 版では PDF の管理は行わず,別のアプローチを取ることにした. 具体的には iPad では Google Drive を用いて,ファイルを直接 Documents (PDF expert) でアノテーションする.
-
PDF ファイルコピーの設定
- macOS 版の Mendeley Desktop の一台(研究用メインマシン) のみに以下の設定を行う.まず,Preferences を選ぶ
- File Organizer メニューを開く
-
Organize my files にチェックを入れ,Copyfile to: を以下のように設定する. ここで,マイドライブフォルダは Google Drive File Stream によってマウントされた場所である. Google Drive File Stream では,保存時に自動的にアップロードが行われ,読み込み時に自動的にダウンロードが実施される. G Suite では容量制限がないので,MacBook Pro のディスク容量を気にする必要はない.
/Volumes/GoogleDrive/マイドライブ/Mendeley
-
ファイル名は他のドキュメントと被らないように Rename する.下の Rename document files にチェックを入れ,File name は以下のように設定した
Year Title Journal
-
BibTeX の設定
- Preferences の BibTeX を開く
- BibTeX Export Preferences で「Escape LaTeX special characters」にチェックする
- Enable BibTeX syncing にチェックする
- 「Create one BibTeX file for my while library」にチェックする. そもそも情報の管理ができない人間なので,group で管理するとどこに書いたかわからなくなりそうだからである.
- Path はどこでもいいのだが,別のマシンでも見えるように iCloud drive の下の「/Users/hkob/Documents」に設定した.
-
Connection の設定 (プロキシ)
- Mendeley Desktop の Connection にはプロキシを設定する画面があった.
- 確認したら研究室のプロキシを設定してあった.ただ,自分で設定した覚えがないので,もしかしたらシステムから自動で読み込むのかもしれない(未確認).
動作確認
以下のような形で動作確認が行える.
- File - Add Entry Manually にて,論文の DOI を入力する.
- DOI の横の虫眼鏡アイコンをクリックする
-
自動的にデータが読み込まれるので,内容を確認する.私の場合には以下のものを修正している.
- 名前の正規化: 名前の姓が全部大文字だったり,名が頭文字だげだったりするものがある.Author でくくり出す時にまとめたいので,同じ表記になるようにする.基本は「姓, 名」の形にするので,「Kobayashi, Hiroyuki」と設定する.すでに入力してあるものは候補が出るのでそれを選択すればよい.
- Conference 名の正規化: こちらも Conference で正規化するので,揃えるようにした.IEEE の国際会議だと Conference 名に年度が入ってしまっていることが多いので,これも削除する.例えば ICIP であれば,「Proc. IEEE Int. Conf. on Image Processing」のようにする.
- PDF ファイルは,右側の Details の下の方にある「Files」のところで追加する.ファイルを追加すると少し時間が経ったのちにファイル名が指定した形に名前が変えられて登録される.
- 登録されたら,Google Drive の Mendeley フォルダを確認する.上記の名前でファイルが格納されていれば成功である.iPad ではこのファイルに直接 Documents (PDF expert)でアノテーションを行う.
-
また,BibTeX のファイルが生成されていることも確認する./Users/hkob/Documents/library.bib の中身を確認する.
Automatically generated by Mendeley Desktop 1.19.4 Any changes to this file will be lost if it is regenerated by Mendeley. BibTeX export options can be customized via Preferences -> BibTeX in Mendeley Desktop @inproceedings{8351220, author = {Watanabe, Osamu and Kobayashi, Hiroyuki and Kiya, Hitoshi}, booktitle = {Proc. IEEE Int. Symp. on Circuits and Systems}, doi = {10.1109/ISCAS.2018.8351220}, file = {:Volumes/GoogleDrive/マイドライブ/Mendeley/2018 - Lossless Two-Layer Coding using Histogram Packing Technique for HDR Images - Proc. IEEE Int. Symp. on Circuits and Systems.pdf:pdf}, isbn = {978-1-5386-4881-0}, issn = {2379-447X}, keywords = {data compression,histogram packing te,image coding}, month = {may}, pages = {1--5}, publisher = {IEEE}, title = {{Lossless Two-Layer Coding using Histogram Packing Technique for HDR Images}}, url = {https://ieeexplore.ieee.org/document/8351220/}, year = {2018} }
library.bib の LaTeX での読み込み
library.bib は LaTeX の標準構成の場所に置かれたものではないので,パスを設定しないと読み込まれない. 面倒なので,texmf-local の下からシンボリックリンクで参照することにする. 手順は以下の通り.
-
/usr/local/texlive/texmf-local/bibtex/bib/local
-
sudo ln -s /Users/hkob/Documents/library.bib .
-
mktexlsr しておく.
sudo mktexlsr
-
利用する時には以下のようにすればよい(IEEE の国際会議などの場合)
\bibliographystyle{IEEEbib} \bibliography{library}
Mendeley Importer の設定
先ほどのようにいちいち Manually にインストールすると面倒なので,Mendeley Importer を使うとよい. これによって,IEEE xplorer などのページを開き,ワンクリックで論文を登録できるようになる. Safari の場合以前は Bookmark を使った Importer があった. しかし,現在は Third party cookie のセキュリティ制約に引っかかり,動作しなくなっている. このため,Importer の機能は現在,Chrome ウェブストアで配布されているものを利用している.
- chrome ウェブストアの Mendeley Importer を開く
- chrome に追加をクリックする
- IEEE Xplorer の画面などで,Mendeley のアイコンをクリックする.
- Web 版の方でインポートされるので,Mendeley Desktop の方は Sync をすることで,データを取り入れることができる.
- ほとんどの場合は PDF は自動取得できないので,既存の PDF を追加する.
- 現在は,この機能をうまく使って Papers 3 に入っている論文を整理しながら Mendeley に移行中である(どうせなので bib の整理も同時に実施している).