情報通信工学コース 山本研究室
東京都公立大学法人

Yamasho Lab Vision and Image Processing

在宅検診を可能とする視線揺動からの精神状態解析

基盤研究(C), 生命・健康・医療情報学, 2015-04-01 – 2018-03-31(予定)

Objective

多様で迅速な業務を要求するグローバル社会への対応は,勤労者に「心の病」という代償としてのリスクを負わせています.資源の乏しい我が国にとって人材こそが国力であるために,人材に対するリスク管理は国策として取り組むべき重要課題であると考えます.そこで,我々は 「心の病」が自律神経のバランスの崩れから発症することに注目して,最も神経系が集中している眼球の運動緩慢検出を特徴とします.また,表情の弛緩や呼吸感覚の変化等も取り入れることにより,ストレスを確実に診断可能とするシステムの開発を目的としています.

Method

眼球運動を司る脳内機能を模式化した図を右に示します.外界から得られた情報は上丘や視床下部を経て,初期視覚野へ伝達されます.その情報を元に脳内の様々な部位で判断が行われ,その結果に基づき,眼球が運動する仕組みとなっています.もし,精神疾患などで脳内の機能が 低下した場合,特定のタスクに対する眼球運動の反応が変化すると仮説し,その反応を捉える事が本研究の基本アイデアです.脳内の判断部位として,形等を判断する側頭連合野や記憶を司る前頭連合野など,与えるタスクに応じて処理が行われる部位は異なります.そのため,特に 影響が大きいと思われる前頭連合野を用いる判断タスクに注目して研究を進めています.

本研究のもう一つの特徴は,「反応的眼球運動」ではなく「意図的な眼球運動」に着目していることです.通常,眼球は動く物体などを追従するように運動を行うことが一般的です.しかし,意図的に動かすことも可能であり,その場合,脳の判断結果が大きくかかわると考えていま す.そのため,指示された方向と逆の方向に視線を向ける,アンチサッカード動作を眼球運動として採用しています,ただ,アンチサッカードだけでは慣れによる影響が危惧されますので.我々は単なる方向判断タスクだけではなく,形や色の認識,または 複数条件を組み合わせるときに記憶能力も一時的に使用する方法を検討しています.

Status

現在は実験設備を完成させ,実験を繰り返し実施している状態です.被験者の前方には十分な視点移動が誘導できるワイド型ディスプレイを用意し,CGで作成した指標をタスクに応じて動かし,被験者が動かすべき眼球方向を決定します.決定後の眼球運動は視線検出装置でリアルタイムに測定が可能です.現在は30fpsの比較的低速な視線検出装置を用いていますが,将来的には更に高速の装置を導入し,微弱で高速な眼球運動の軌跡を分析しています.一方,精神的ストレスでの反応は様々な人間機能に現れると仮定し,頭部の動きや上場なども同時に測定できるシステムを構築してきました.今後は様々な判断タスクを再現さえ,ストレスが最も顕著に出現する手法を絞り込んでいきます.

Reference

    

[1]Taku Yonezawa, Shoji Yamamoto, Hirokazu Doi, Kazuyuki. Shinohara, Norimichi Tsumura,
 Biological Responsiveness in Observing Sexual Attractiveness of Woman,
 IEEE Workshop on Attractiveness Computing in Multimedia (BigMM 2017), USA, (Apl, 2017).
 [Fullpaper Refereeing]

[2]岡本健志,松藤彰宏,山本昇志,
 視線検出を用いた系列位置効果の評価手法の開発,
 映像情報メディア学会技術報告, Vol.41, No.4, pp.1-4, (2017.2.28, 横浜).

[3]山本昇志, 本田秀明,井上薫,原直人,
 視線挙動測定による状況判断能力の評価,
 第52回日本交通科学学会総会学術講演会, pp.110-111, (2016.6.18, 東京).

[4]Shoji Yamamoto, Hideaki Honda, Kaoru Inoue, Naoto Hara, Norimichi Tsumura,
 The Difference of Velocity between Eye and Head Movement under Mental Fatigue Condition,
 Proceedings of OSA Fall Vision Meeting, Session3-3(contributed), San Jones, CA, USA, (Oct, 2015).
 [Abstract Refereeing]

[5]本田秀明,井上薫,原直人,津村徳道,山本昇志,
 眼球と頭部の運動比較による心因的疲労の評価,
 日本眼光学会総会予稿集, O-25, (2015.9.27, 岡山).

[6]本田秀明,井上薫,原直人,津村徳道,山本昇志,
 心因的疲労の評価に適した視線誘導手法の検討,
 日本色彩学会 視覚情報基礎研究会, CSA-FVI-2015-16, (2015.12.19, 東京).