Abstract: 近年、持続可能でクリーンなエネルギー資源として、水分解光触媒を用いた水素生成が注目されています。 光触媒を用いた水素生成システムは、太陽電池や風力発電などと電気分解を結合したシステムよりも、はるかにシンプルで、安価であり、そして、大規模な展開が容易です。 しかし、現状では、光触媒による水素生成は、エネルギー効率が良くありません。 本論文では、溶媒効果を考慮したHSE06汎関数を用いた高精度な密度汎関数計算により、安定な高効率の水分解光触媒として、リン化ホウ素(boron phosphide)の単原子層膜を提案します。 リン化ホウ素の単原子層膜は、約1.4eVのエネルギーギャップの直接遷移型半導体であり、1段階水分解光触媒として機能します。 約890nm未満の波長の太陽光(紫外線、可視光、近赤外光)を吸収し、適切なpH条件下で、水から水素ガスと酸素ガスの両方を生成します。 水素生成反応と酸素生成反応の過電圧を計算することで、光触媒としての有効性を確認しました。 リン化ホウ素の単原子層膜は、グリーン水素革命を実現します。 © 2022 Tatsuo Suzuki
概要 III-V族化合物は半導体デバイス材料として非常に重要な物質である。 第一原理計算を用いることにより、III-V族二元化合物の単原子層物質の新しい安定形状を発見した。 発見された形状の基本単位格子は長方形であり、その中に、4つのIII族原子と、4つのV族原子が含まれている。 III族原子と、その最近傍の3つのV族原子は、同一平面上に存在するが、この結合はsp2混成軌道ではない。 V族原子を取り囲む結合角は、sp3混成軌道の結合角よりも小さい。 GaPの発見された形状は間接遷移型半導体である。 GaAs, InP, 及び InAsの発見された形状は直接遷移型半導体である。 したがって、これらの化合物の発見された形状は、水分解光触媒などの半導体デバイス材料として有望である。 発見された形状は、他の物質から成る単原子層物質でも安定形状となるかもしれない。 © 2015 AIP Publishing. This article may be downloaded for personal use only. Any other use requires prior permission of the author and AIP Publishing.
概要 炭素の単原子層物質グラフェンを細長く切り取って作ったグラフェンナノリボンの電子状態は、そのエッジがジグザグエッジであるか、アームチェアエッジであるかによって、異なった性質となる。 強結合近似の結果では、水素で終端されているジグザグ型のグラフェンナノリボンは金属となり、水素で終端されているアームチェア型のグラフェンナノリボンは、線幅に応じて金属か半導体になる。 しかし、水素で終端されているグラフェンナノリボンの最も細いものはポリアセチレンであり、これらは半導体である。 この矛盾は、ポリアセチレンの構造がパイエルス転移により変化することが原因である。 そこで、グラフェンナノリボンのパイエルス転移の効果を、ポリアセチレンからグラフェンまで、構造最適化を伴った密度汎関数法を用いて系統的に調べた。 その結果、パイエルス転移の効果はリボン幅の増大に伴い急速に消失してしまうことなどがわかった。 © 2011 American Institude of Physics
概要 グラフェンは室温で量子ホール効果が観測されるなど、その特異な性質が現在、大いに注目されている。 グラフェンはエネルギーギャップがゼロであるが、半導体デバイスとして利用するためには、エネルギーギャップを自由に制御できることが望ましい。 そこで、グラフェンと同じハニカム構造の単原子層化合物半導体を作ることで、様々なエネルギーギャップの物質を得ることができるのではないかと我々は考えた。 我々は、密度汎関数法を用いて、様々な物質の電子状態を計算した。計算した物質は、C(graphene)、Si(silicene)、Ge、GeC、GeSi、BN、BP、BAs、AlP、AlAs、GaP、GaAs である。 計算の結果から、Ge は半金属となり、AlP、AlAs、GaP、GaAs は間接遷移型半導体、他の物質は直接遷移型半導体となった。 さらに、グラフェンの炭素原子の一部をシリコン原子に置換していった場合の、バンド構造の変化も計算した。 計算の結果(下図)から、炭素のみ、またはシリコンのみの単原子層物質ではエネルギーギャップがゼロであるのに対して、グラフェンの炭素原子の一部をシリコン原子で置換すると、エネルギーギャップが開くことがわかった。 つまり、グラフェンへシリコンをドーピングすることで、エネルギーギャップを自由に制御できる可能性があることがわかった。 単原子層化合物半導体は、新機能デバイス材料として有望であるというのが、我々の結論である。 © 2010 Elsevier B. V.
This paper was first presented at the 14th International Conference on Modulated Semiconductor Structures (MSS14) held in Kobe, Japan, on 23 July 2009.
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炭素とシリコンからなる単原子層物質のバンド構造 |
概要 学生の独創性を育み,彼らの創造意欲を向上させることを目的として,国立科学博物館の新しい展示『科学と技術の歩み ―私たちは考え,手を使い,創ってきた―』を見学させる教育実践を行った。 見学の目的を明確にし,適切なレポート課題を与え,事前指導を行うことで,極めて高い教育効果を上げることができた。 この見学を通して,学生達は,人間の持っている独創性や可能性に気づき,自分達も先人達を見習って,社会に貢献する創造的な仕事をしたいという強い希望を語ってくれた。 最近は,若者の理科離れが進み,さらに,ニートと呼ばれる就労意欲を喪失した若者が増えていることが社会問題化している。 社会が豊かになったために,若者が無気力になってしまったという否定的な考えをよく聞くが,この教育実践により,優れた教育を行えば,若者達は個性や独創性を尊重し,強い創造意欲を示してくれることがわかった。
学生の感想(1) どの展示,解説,あるいはインタビューからも一貫して伝わってくることがある。 開発に係わっているエンジニア達の熱意だ。 どのエンジニアも,高い目標志向と向上心,誇り,プライド,そんなものを持ち合わせている。 インタビューに答えるもう還暦越えのおじいさんになってすら,その目の輝きは消えていない。 今,日本が経済,技術力において世界でもトップクラスなのは,展示されているような物を創ってきた彼らのおかげだということだ。 これから日本を支えるエンジニアとなり開発者となるにはまさに彼らを見習うべきだと,そう感じた。
学生の感想(2) 今回,展示物を見て計算機の歴史から近年の科学技術の進歩をとても感じることができました。 計算機に関してはこんなに大きかったものが今は非常に小さくなっていることにまず驚きそれだけではなく,より高度で複雑な作業が可能になりました。 普段,なにげなく接している技術がいろいろな歴史,いろいろな人の努力によって可能になっているものと思うと,感謝の気持ちでいっぱいになりました。 また,これからは自分たちエンジニアが,先端技術に携わる身としての責任と未来の希望を感じることができました。
Abstract: Hamiltonians that generally describe the effects of strain are proposed. The strain effects can be calculated easily from the unstrained potential using these Hamiltonians. These Hamiltonians are valid when the strain is spatially modulated, and are also valid when the strain exists in a magnetic field. These Hamiltonians can also be used in the improved effective mass approximation. © 2001 The American Physical Society
Abstract: Results of detailed self-consistent calculations for edge states are reported on the energy level structure of wide quantum wires formed by a split gate at GaAs/AlGaAs heterostructures in high magnetic fields at low temperatures. The flattening of the dispersion of edge states (a compressive strip) appears only in very wide wires under limited conditions that the estimated width of the strip is larger than the extent of the edge-state wave function, i.e. the cyclotron radius. © 1998 Elsevier Science B. V.
Abstract: Results of a self-consistent calculations are reported on the energy level structure of quantum wires formed by a split gate at GaAs/AlGaAs heterostructures in high magnetic fields at different temperatures. The electron density associated with partially filled Landau level oscillates spatially to minimize the Coulomb energy and has a characteristic double-step variation near the edge at low temperatures. © 1996 Elsevier Science B. V.
Abstract: Results of a self-consistent calculation are reported on the energy level structure of quantum wires formed by a split gate technique at GaAs/AlGaAs heterostructures in magnetic fields. The confinement potential approaches an abrupt barrier in high magnetic fields even for narrow wires for which it is nearly parabolic in the absence of a field. © 1994 Elsevier Science B. V.
Abstract: A self-consistent calculation is performed for the study of magnetic-field effects on the energy level structure of quantum wires formed by a split gate technique at GaAs/AlGaAs heterostructures. The self-consistent potential and the energy dispersion exhibit a dramatic change when a subband depopulation occures in high magnetic fields. © 1993 The Physical Society of Japan
Abstract: A search has been made for strange matter with a CR-39 track-etch detector with an array of 160 m2, exposed for 8 months at mountain altitude. The non-observation of penetrating tracks places a new stringent upper limit on the flux of strange matter, 2.2×10-14cm-2s-1sr-1 (90% confidence level) in the velocity range β(≡v/c) > 4×10-5. © 1991 Elsevier Science B. V.
Abstract: A direct search has been made for supermassive relics (heavier than about 1012 GeV/c2) with a 2000-m2 array of CR-39 track-etch detectors deployed underground for 2.1 yr. The nonobservation of penetrating tracks places a new upper limit for the velocity-dependent flux at 3.2×10-16cm-2s-1sr-1, for magnetic monopoles carrying various magnetic charges, for electrically charged relics, and for strange matter. This flux limit corresponds to a limit on the relics abundance of order nx/nγ=10-28 relative to the 3-K photons. © 1991 The American Physical Society
概要 東京都立航空工業高等専門学校電子工学科5年後期選択科目(1単位)の「ハードウェア構成法」という科目では,学生が数名でチームを作り,学生自らが自分たちで作りたいディジタル回路を立案し,それをハードウェア記述言語 (Verilog HDL) を用いて設計・製作するというプロジェクト型の授業形態をとった。 学生自らが,自分の頭で考え,自らの手で作るという教育実践は,教室での単なる講義と比較して,極めて高い教育的効果を上げることができた。 ハードウェア記述言語を用いた論理回路設計手法を,時代に先駆けて授業に取り入れた教育実践が,どのような特徴を持ち,これまでの7年間で,どのように実践されてきたのかについて詳しく報告する。
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詳細な仕様を検討している学生たち | ハードウェア記述言語を用いて回路設計のプログラムを書いている学生たち | FPGA 実習ボードに設計したプログラムを焼き込み,デバッグをしている学生たち |
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成果発表会で設計・製作した回路の技術仕様を説明している学生 | 2003年度学生製作作品 『THE もぐら叩き』実演動画 |
2008年度学生製作作品 『電卓』実演動画 |
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関東工学教育協会賞(業績賞)表彰状 | 日本工学教育協会賞(業績賞)表彰状 |
概要 東京都立航空工業高等専門学校の電子工学科では、1年のときに科学博物館の見学を行っている。 科学博物館の見学をより効果的にするため、見学方法を改善した。 学生に適切なレポート課題を与えることで、極めて高い教育効果をあげることができた。 学生から提出されたレポートを分析することで、学生がどのようなことに興味を示したかを把握した。 その分析結果と私の教育経験をもとにして、僭越ながら、科学博物館のより効果的な展示方法を次のように提言する。
- 体験型展示のそばに、その応用製品をわかりやすく展示する。
- 体験型展示のそばに、その動作原理を発見・発明した人の、写真・肖像画や年表を展示し、その発見・発明時のエピソードなどをわかりやすく示す。
- 不思議を感じたら、その場でその疑問を解決できるような詳細な解説を用意する。また、知的好奇心をより高いレベルにまで引き上げるような解説を用意する。
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野依良治博士(2001年ノーベル化学賞受賞者)と表彰式にて撮影 | 野依科学奨励賞 表彰状 |