3年次の科目「電気電子工学実験実習Ⅱ」では、約2ヶ月をかけてデザイン思考の授業を行っています。4名のチームで、協力企業(クライアント)から与えられたテーマに関する問題を発見し、解決案を提案するという体験をしてもらいます(過去のテーマ例は下方に示しました)。問題発見のステップでは、当事者(ユーザ)へのインタビューや調査を行い、エンパシーマップやペルソナなどを作成します。解決案の探索のステップでは、エクスカーション法、NM法、ブレインストーミング、コンセプト抽出などを行います(各方法は2年次に学習済)。アイディアをブラッシュアップし迎える最終発表会では、クライアントやユーザから提案についての評価を受けます。人や社会の複雑な問題を発見し、他者と協力して解決するエンジニア、それが VUCA 時代に求められるエンジニアです。デザイン思考はそのようなエンジニア育成のため2015年度より行われています。
4年次の学修単位科目ソフトウェア設計Iでは、4人から5人のチームでプログラムを設計・開発します。設計するものは、ボードゲームやカードゲームなどのゲームシステムです。これらは例外処理が多く、かなり複雑なシステムになります。チームの中で選出された1名のリーダは、プログラムを書くことが禁止され、チームマネージメントのみに徹します。リーダからメンバに向け、テスト記述や実装の記述などの指令が送られます。このチーム間の連絡は全てウェブ上のプロジェクト管理システム(redmine)で行われ、全てのプログラムはクラウドリポジトリ(git)で同期されます。また、設計書は Notion というクラウドツールを用いて共同編集しています。学生はこれらクラウドツールを使うことで、自宅などでも共同作業を行うことができます。
計測工学Ⅱの授業では、光センサを用いて生体情報を計測しフィードバックするシステムをマイコンを用いて構築します。学生が構築するシステムのゴールは、「人のパフォーマンス向上」です。得られた脈波の信号解析により体の状態を評価し、状態に応じた介入をすることでパフォーマンスの向上を目指します。そのために、「ユーザインタビュー」を通じて「パフォーマンス向上の阻害要因(ストレス・集中力の欠如など)」を定義にし、その阻害要因を軽減する介入方法(アイデア)をチームで検討します。また、実際に提案システムを構築し、効果の評価までを行います。この授業を通じて、製品開発の上流工程から実装・評価までの過程を体験的に学びます。
4年の学修単位科目ディジタル電子回路Ⅲでは4ビットCPUを設計製作しています。CPUの動作原理と構造を学んだ後、独自命令2つ以上を加えたオリジナルCPUを設計製作し、実際に動作させます。具体的には、3名1チームで、まず、CPUの全体構造と各回路の入出力を決め、論理回路シミュレータで動作確認をします。次に、各人が担当する回路について回路設計用CADソフトで基板レイアウトを行います。続いて、基板加工機で基板を作成し、ICソケット等の部品をはんだ付けします。最後に回路テストを行います。でも一発ではまず動きません。ここからが本番、真の最終ステップであるデバッグを行います。問題症状を観測したら、設計や実装をよくチェックし原因を洗い出します。原因に対して適切な解決策を選んで、問題を解消します。VccやGNDをレイアウトし忘れたり、基板加工機の刃を折ったり、メンバー間で衝突したり、ついに正常動作しみんなでガッツポーズしたり、様々な体験をしながらCPUの完成を目指します。
3年のディジタル電子回路Ⅱでは、ディジタル回路を含むものなら何でもOKというお題で、チームでものづくりを体験します。教科書で学んだ汎用論理 IC(74HCシリーズ)や論理回路設計の知識を活用することが目的の一つです。メンバーで何を作るかアイディアを出し、機能を実現するための回路を調査・考案・設計し、logisim を用いてシミュレーションをした後に、実際の回路を製作していきます。望む機能を回路にするとどの程度の規模になるのか(サイズ、集積度、基板枚数、複雑さ)、実際に作るのにどのくらいの時間がかかるのか(スケジュール管理、タスク管理)、授業を聞いているだけでは身につかないものづくりの感覚を養うことがもう一つの目的です。知識を知っているだけにとどまらず、知識をどんどん使っていきましょう。