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拇指の問題

ハイブリッドモードにより、把持可能な物体の対象はかなり拡大しました。しかしながら、その一方でやはり把持が難しい物体もまた存在しました。その主たる要因を検討した結果、特に問題となったのが拇指の動作です。
 このハンドにおいて、拇指は1自由度のみで動作していました。これは、拇指の機能と動作は相当に複雑なため、簡潔構造を掲げるこのハンドでは手を付けるべきではないと判断したこと、当初実現しようとした把持動作では、拇指はあくまで支点として作用すれば良く、細かい動作を行わなくても目的を達成できることがわかっていたからです。しかしながら、ハンドの把持対象が拡大するにつれ、この拇指の機能不足が表面化してきました。このため、拇指機能の向上が、現在のハンドの大きな問題となっています。


拇指MP関節の2自由度化

 拇指の機能向上を図るため、拇指TM関節を2自由度化しました。すなわち、従来は1個であったサブサーボモータを2個配し、屈曲・伸展、内転・外転の2方向に拇指TM関節を屈曲できるようにしました。なお、屈曲・伸展方向はIP関節の屈曲も担っています。


<拇指TM関節が2自由度化したことにより、示指-拇指、中指-拇指、環指-拇指といった形で、各指との対向が実現できるようになった>

日常生活における、ハンドの実用性

 学会向けの研究としては、ハンドの機能向上は正しい方向に向かっていると言えます。しかし、それが実際にどの程度人々の生活に役立つ物であるのか、開発者自身が疑問に思うことも多々あります。
 そこで、ハンドの端部を以下のように改造し、右手に装着できるようにしました。またサブサーボモータ、メインサーボモータは市販のマイコンボード(近藤科学:RCB-3HV)に接続し、このマイコンボードをやはり市販の無線コントローラ(ヴイストン:VS-C1、クラフトハウス:REV-1)によって操作できるようにしました。無線コントローラには予めサブサーボモータの動作パターンを打ち込んであり、あるボタンを押せば示指-拇指摘み用パターンを、別のボタンを押せば中指-拇指摘み用パターンを・・といった形で、簡単に各指の屈曲形状(以後シェイプと呼びます)を与えることができます。


図 ハンドを右手に装着。無線コントローラを右手で持ち、操作を行う


 このように、コントローラのボタンを押して対象とする物体の把持に適したシェイプにハンドの各指を形成した後、メインサーボモータの動作を指示するボタンを押します。メインサーボモータは、レベル1〜レベル8まで設定してあります。レベル1のボタンを押せば、メインサーボモータは僅かな角度しか屈曲しません。以後、レベルが上がるにつれメインサーボモータの屈曲角は増えて行き、レベル7でほぼ全体が握り込まれた形(いわゆるグーの形)になります。レベル8は「ハンドが壊れるかも知れないが、とにかく強い力で握りたい」時のためです。つまり緊急用です。
 現在のハンドは、メインサーボモータの定格電圧11.8Vに対し、電源のバッテリーはおよそ半分の6Vで駆動しています。このため、握力としては極めて弱い状態であり、万が一握手時にレベル8で握っても相手を傷つけることはないようになっています。




日常生活におけるハンドの使用例

   学会発表のために作成した動画が以下のものです。研究室での実験だけではなく、実際に日常生活においての有用性を確認するために、簡単な作業やスポーツ、食事などの作業の実用性を検証しました。この作業を行うために、結果としてはハンドは全面的に改良せねばなりませんでした。僅かな突起、僅かな軸のズレ、僅かなジオメトリの違いで、把持が出来るか出来ないかが決定的に違ってくるためです。(ここでは詳細には触れませんが、結局この修正のために3週間を要しています)。
 以下の動画はある一日の作業に関し、右手に装着して行ったらという仮定のもと行った結果を示したものです。なお、全ての作業に関し、ある程度失敗もしていることと付け加えます。
(なお、自転車に乗るシーンがありますが、実際には道路は走行していません)


箸の操作

箸を利用した実験を行いました。 
福祉用の箸を利用することで、本ハンドでも様々な食物を摘み上げることが可能であることが分かりました。

食事作業

箸以外にも食事作業を実験しています。 
ポテトチップ、チョコレート、お弁当、ザル中華、寿司、1.5リットルのペットボトルなどです。

今後について

   ハンドを日常生活で使用することで、実験室の中で行っていたのではわからないことが沢山見えてきました。これまでのハンドは、「適切な位置に指先が来ればよい」「幾つかの複雑な物が持てればよい」という観点に留まっていたように思います。それに対し、日常生活には様々な物があり、様々なシチュエーションが存在します。これらに対し、適切に対応できなければ、本研究が目的とする、生活支援ロボットのためのハンドとしては不十分であると言わざるを得ません。
 今後は、実験により得られた知見を元に、より多くの物体を容易に把持するための各種構造の検討、改造を行っていく予定です。


関連文献

1) 深谷直樹、遠山茂樹:TUAT/Karlsruhe humanoid handにおける多指操作装置の開発、福祉工学シンポジウム2009講演論文集、P.159、2009
2)深谷直樹、和田博、遠山茂樹:TUAT/Karlsruhe Humanoid Hand の把持機能向上、第28回日本ロボット学会学術講演会講演予稿集、1O2-1、2010 (in DVD)
3)深谷直樹、和田博、遠山茂樹:手掌皺を有するTUAT/Karlsruhe Humanoid Hand の開発、第29回日本ロボット学会学術講演会講演予稿集、1P1-2、2011 (in DVD)
4)深谷直樹, 和田博, 遠山茂樹: TUAT/Karlsruhe Humanoid Handの拇指MP関節2自由度化,日本ロボット学会第30回記念学術講演会講演論文集, 2O2-5 (in DVD)


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